前立腺について
前立腺は精液の一部を作る臓器で、直腸と恥骨の間にあります。成人男性の前立腺はクルミ程度の大きさであるとされています。尿道が中央を通っているため、肥大などにより圧迫されて排尿障害の症状を起こします。
前立腺肥大症
前立腺は加齢によって肥大する傾向があるため、前立腺肥大症は中年以降に多い病気です。前立腺の肥大により、さまざまな排尿障害の症状が生じます。
排尿に関する症状では、尿の勢いが弱くなる、尿意はあるのになかなか尿が出ない、排尿中に尿が途切れる、強く力まないと排尿しないなどがあります。蓄尿症状として頻尿、急に強い尿意が起こる、尿漏れするなどがあり、排尿後の症状として残尿感や切れの悪さがあります。
診察では症状を詳しくうかがった上で、超音波検査、尿流測定、尿検査、血液検査を行います。まず、薬物療法での治療を行いますが、これで十分な効果が現れない場合には手術が必要です。ただし術後に尿失禁を引き起こす、あるいは頻尿が改善しない可能性もありますので、事前に医師としっかり話し合い、ご自分に合った治療法を選択することが重要です。
手術は、これまで肥大した前立腺を電気メスで切除する経尿道的前立腺切除手術(TURP)しかありませんでしたが、近年になってレーザーによる前立腺核出術や前立腺蒸散術が登場し、お身体への負担が軽減されています。
前立腺がん
日本人には少なかった前立腺がんですが、最近は増加傾向にあります。腫瘍マーカーのPSA検査による早期発見が可能なこともあり、健診や人間ドックで異常を指摘されて泌尿器科を受診して発見されるケースも増えています。進行すると排尿トラブルの症状が現れ、転移による症状で気付く場合もあります。早期には自覚症状がほとんどないため、リスクが高まる50歳を超えたらPSA検査を定期的に受けることをおすすめしています。
PSA検査で4.0ng/ml以上を指摘されたら泌尿器科で専門医の診察を受けてください。直腸指診、腹部超音波検査、MRI検査の他、組織を採取して行う前立腺生検で前立腺内のがん細胞の有無を調べて診断します。前立腺がんであることがわかったら、転移の有無や状態を確認し、治療方針を決めていきます。
治療には、回復術・腹腔鏡下手術・ロボット支援下手術などの手術、放射線治療、ホルモン療法、化学療法、経過観察などがあり、状態に合わせて適切なものを選択します。副作用などの可能性も含め、しっかり内容を理解した上で適切なものを選んでください。
※当院では、前立腺がんの通院治療(内分泌療法)および治療後の経過観察なども可能です。また、他院(戸塚共立第一病院、横浜医療センター、栄共済病院など)とも連携して、前立腺がんの診断・治療に貢献していきたいと考えております。
急性前立腺炎
尿に含まれる細菌が前立腺に感染して炎症を起こしています。代表的な症状は、38℃以上の高熱、排尿痛、排尿困難、頻尿などがあり、症状が強く出ることが多いです。尿検査で細菌感染の有無を調べ、必要があれば前立腺の炎症の状態を直腸診で確認します。
治療は抗菌薬の内服や点滴が中心です。全身状態によって入院加療が必要になる場合もあります。
前立腺肥大症を合併していることが多く、前立腺肥大症の治療を行うことも多いです。くり返すことも多いため、早めに受診してください。
慢性前立腺炎
急性前立腺炎の慢性化の他に、デスクワークやストレスによって発症することがあります。20~40歳代に多く、中年以降の発症が多い前立腺疾患の中で、若い世代の発症の多いことが特徴になっています。症状は、陰嚢と肛門の間である会陰部の痛みがあり、他に下腹部・股間部・睾丸・尿道・陰茎などの痛みや不快感、排尿痛、射精時痛、頻尿、残尿感などが現れることもあります。
確立した治療法がないため、薬物療法により炎症を鎮め、ストレスを解消していくことが治療の基本になります。