尿失禁について
くしゃみなどの拍子に少量の尿漏れが起こる、トイレに間に合わずに失禁してしまうなどの症状が起こる状態です。意思とは関係なく尿が出てしまうため、生活にも大きな支障が現れます。悩んでいる方はとても多いのですが、「年だから」「恥ずかしくて相談できない」などで我慢している方がまだまだたくさんいらっしゃいます。
当院では状態や原因に合わせた適切な治療を行いますので、気兼ねなくお伝えください。
尿失禁の種類
尿失禁の症状は4つに大きく分けられます。
腹圧性尿失禁
おなかに力が入った時に尿が漏れる状態です。走る、ジャンプする、重いものを持ち上げる、咳やくしゃみなどで尿漏れが起こります。日本では2000万人以上の方が腹圧性尿失禁に悩んでいるとされていて、これは女性の4割にものぼります。
骨盤底にある尿道括約筋などの骨盤底筋群がゆるんでしまうことによって起こり、加齢や出産などが原因になっています。
切迫性尿失禁
急激に強い尿意が起こる尿意切迫感により、我慢できずに尿が漏れてしまう状態です。原因なく膀胱が勝手に収縮して起こるケースが多いのですが、脳血管障害などにより脳からの排尿指令のコントロールがうまくいかなくなって起こっている可能性もあります。また、男性の前立腺肥大症、女性の骨盤臓器脱の症状として現れていることもあります。トイレが近くなる頻尿や間に合わないかもしれないという不安により、仕事や外出に支障が及び、クオリティ・オブ・ライフを大幅に下げてしまうため早めにご相談ください。
溢流性尿失禁
尿意があるのに勢いよく排尿することができず、少しずつ尿が漏れていく状態で、排尿障害を必ずともないます。前立腺肥大によって起こることが多く、溢流性尿失禁は男性に多い尿失禁の症状です。また膀胱周囲にある神経の機能が低下することで起こるケースでは、直腸がんや子宮がんの手術などがきっかけとなっていることもあります。
機能性尿失禁
排尿機能は正常ですが、身体運動機能の低下や認知症によって起こっています。歩行障害でトイレに間に合わない、認知症でトイレでの排尿ができないなど、原因に合わせて介護内容や生活環境の改善が重要になってきます。
尿失禁の検査
問診と診察でしっかり症状やお悩みをうかがっていきます。排尿状態や尿失禁の程度を正確に把握するため、排尿日誌(排尿時間と排尿量の記録)をつけていただきます。
検査は、検尿、超音波検査による残尿量測定などを行います。身体に負担なく受けていただける検査ですのでご安心ください。詳しい検査が必要な場合には、尿流動態検査、膀胱鏡検査などを行っていきます。
尿失禁の治療
尿失禁は生命に関わる症状ではありませんが、お仕事や外出などに大きな支障を生じます。尿失禁の種類や程度により治療法はさまざまですし、原因となる病気がある場合にはその治療が不可欠です。尿失禁の症状があったら必ず泌尿器科にご相談ください。
腹圧性尿失禁
軽度であれば尿道周辺の骨盤底筋群を骨盤強化することで改善する可能性があります。肥満や急に太った方の場合には、減量による効果も期待できます。こうした治療で効果が不十分な場合には手術を検討します。現在は負担が少なく、長期的な効果が見込める手術が登場しています。尿道を支えるためにポリプロピレンメッシュのテープを尿道の下に通すTVT手術、TOT手術などがあります。
切迫性尿失禁
有効な薬物療法があり、それとともに飲水コントロール、骨盤底筋訓練、尿意があっても少し我慢する膀胱訓練などの行動療法を行っていきます。薬は、抗コリン薬やβ3受容体作動薬などを用います。
尿失禁の予防
下半身を冷やさない
冷えは尿意につながりますし、過活動膀胱では冷えが尿失禁を起こす誘因にもなります。靴下やひざ掛けなどで足元やおなか、腰を冷やさないよう心がけてください。また、夏場も冷房などによる下半身の冷えに注意しましょう。
骨盤底筋を鍛える
尿失禁の多くは骨盤底筋のゆるみによって起こっています。そのため、骨盤底筋を鍛えることで尿失禁を予防することができます。骨盤底筋を鍛える運動は、あおむけに寝て足を肩幅に開き、膣と肛門に力を入れて引き締めてからゆるめるという動作を1分ごとに繰り返し、10~20回行うという内容です。これを朝夕行ってください。効果が出るまでには3-6か月かかるので継続することが重要になります。